ピンバッジの誕生とバタフライクラッチの歴史 | オリジナルピンバッジ製作 PINS FACTORY (ピンズファクトリー)

ピンバッジの誕生とバタフライクラッチの歴史

ピンバッジの誕生とバタフライクラッチの歴史

ピンバッジは、ロゴやキャラクターがデザインされてプロモーションとして活用されるツールであり、オリンピックを機に一気に大流行したアイテムで、世界中のコレクターがトレーディングを楽しんできたという歴史を持っています。今やイベントで活躍するだけでなく様々なビジネスシーンにも活用されて、ピンバッジの用途も仕様も多様に変化してまいりました。

しかし、変わらない要素もあります。針とクラッチで構成される基本スタイルはピンバッジの誕生からずっと変わらず、ピンバッジの定義には欠かせない要素の一つとして知られています。もし「ピンバッジとは何だ?」と問われれば、ピンバッジ裏面の「針とクラッチ」のその独特のスタイルを無視して語ることはできないでしょう。そこでここではピンバッジの特徴的なクラッチの中でも、ピンバッジの最も代表的なイメージを形成する「バタフライクラッチ」について、その歴史からご紹介いたします。

ピンバッジの誕生

20世紀中頃(1930~1950年?)、フランスでは社章、階級章、会員章に代表される所属や階級を表すバッジだけではなく、広告や販促などのプロモーションやブランディングに活用される風潮が見られるようになりました。そうした風潮は世界的に有名なブランドのラコステ、ペリエのブランドマークのバッジや、ゲラン、シャネル、イヴ・サンローランといったファッション関係の企業が商品発表会のインビテーション用として活用したバッジが最初だと言われています。この潮流で生まれたバッジが「ピンズ」と呼ばれるようになりました。

当時のパリのオープンカフェではギャルソンが馴染みの客とピンバッジの交換をして、自分の着ているベストに競ってピンバッジを付けていたと伝えられています。そのときパリを訪れたアメリカ人の観光客がそのファッションを見て楽しみ、チップとしてピンバッジをギャルソンに渡していたこともあったとか。

この時のピンバッジのアタッチメントがバタフライクラッチだったと言われています。それまで広告や販促用のバッジには「管(くだ)ピン」と呼ばれるアタッチメントが使用されていました。「管(くだ)ピン」とは、安全ピンやブローチピンのように二重らせん部分でピンが折り曲げられた形状で、針先を外して2つ穴で布地に留め付けるアタッチメントです。これに対してバタフライクラッチは蝶の羽のような部分をつまむ調子でワンアクションによる脱着が可能です。その使いやすさが受け入れられて、今日までピンバッジの代表的なアタッチメントとして確立していったと考えられています。

バタフライクラッチ以前は管(くだ)ピンが主流だった

バタフライクラッチの誕生

ピンバッジの代表的なアタッチメントであり、ピンバッジのイメージを決定づけるバタフライクラッチはどのようにして生まれたのでしょうか?その生みの親はアメリカの宝飾部品メーカーであるバロー社(B.A.BALLOU&CO.INC.)という企業でした。バロー社は1868年にバートン・アラン・バロウによって創業され、宝飾部品や銃の安全装置などの製造も行い、第二次世界大戦中には3億個もの徽章や勲章の製造を手掛けたそうです。今では実に150年の歴史を持つ部品メーカーということですね。バタフライクラッチ以前では、同社は帽子につける徽章の留め具として「割りヤシ(割りピン)」を製作していました。しかし、二股の足に当たる部分を開いて固定させるこの「割りヤシ(割りピン)」は、帽子の生地にそれ相当なサイズの穴をあける必要がありました。

そこで開発されたのがバタフライクラッチでした。このバタフライクラッチは1942年に特許が取得されて以降、ピンバッジの留め具(アタッチメント)として世界中に広まっていきました。もしバロー社製のバタフライクラッチを使用しているピンバッチを見つけたらそのバタフライクラッチの裏面をご覧になってみてください。そこには必ず”BALLOU REG’D”の文字の刻印を見つけられるはずです。”REG’D”とはREGISTEREDの略称で「登録済み」を意味していて、つまりこのバタフライクラッチが特許登録済みということを表しています。直径13mmにも満たない小さな部品とはいえ、生み出されるべき背景と確固たる歴史があったのですね。

徽章の留め付けに使用されていた割りピン
バロー社製バタフライクラッチの画像

バロー社製バタフライクラッチの特徴とその価値

さて、それでは同じバタフライクラッチでもバロー社ブランドとノンブランドとでは何が違うのでしょうか?まずバタフライクラッチは1枚の金属板から切り出しと加工を経て製造されますが、ノンブランドの金属の板厚が0.25mmに対してバロー社ブランドのバタフライクラッチの板厚は0.35mmと金属の厚みが増しています。たった0.1mmの厚さの違いですが、それによってノンブランドと比較して針が突き抜けにくくなっています。特別に意図して力を加えれば別ですが、通常の使用ではまず突き抜けることはないでしょう。また、はじめは留め付け時のツマミに固さを感じるものの、かっちりと留め付けることが出来る感触はノンブランドにはない安定感と言えます。装着時における外れにくさや脱着回数の耐久度も比較的に高く、好んで選定される理由があることもうなずけます。※当社内の品質検査では、バロー社ブランドのバタフライクラッチは耐用回数や引張強度においてノンブランドより優れていることを確認しています。

ピンバッジコレクターの間では、ピンバッジにバロー社ブランドのバタフライクラッチが装着されているか否かもピンバッジの価値を図るポイントとなっていると聞きます。バロー社ブランドのバタフライクラッチはノンブランドと比べて製造コストが若干高いのですが、おそらくピンバッジコレクターは“それ故”に製造個数が少ないのではないかと推察し、そこに希少価値を見出しているためだというのが一説です。逆にピンバッジを製作する側の企業としては、そのピンバッジの重要さや貴重さに見合った仕様にするために、バロー社ブランドのバタフライクラッチを採用してピンバッチに特別感を醸成させるケースも見られます。

ワンアクションによる使いやすいバタフライクラッチによってその後のピンバッジのイメージを決定づけた大きな功績や、150年以上における部品メーカーとしてのバロー社の歴史深さから紡ぎだされる装着時の安定感や脱着の高い耐久度。それらに証明された確かな技術とパイオニアとしての存在感が、ピンバッジコレクターからピンバッジを製作する企業まで魅了するバロー社ブランドのバタフライクラッチの魅力なのかもしれません。


【バロー社製バタフライクラッチの取り扱いについて】
バロー社ではバタフライクラッチの材料確保が難しいことと、従来のバロー社製バタフライクラッチの品質を保った生産が行える体制ではないことから、現在はここで説明しているようないわゆる「バロー社製バタフライクラッチ」を入手することがほぼ不可能な状況です。したがって現在はお客様に「バロー社製バタフライクラッチ」をご提供することができません。
また「バロー社製バタフライクラッチ」のこうした市場の状況を利用して、バロー社とは関係のない企業が「バロー社製バタフライクラッチ」と偽ってピンバッジメーカーに納入している可能性がございますので、他のピンバッジメーカーで「バロー社製バタフライクラッチ」を仕様としたピンズをご注文する場合はご注意ください。(2023年8月)

This is PINS

ピンバッジの起源は軍の徽章だと言われています。国から授けられるようなそうした徽章が持つオーソリティをDNAとして持ったピンバッジは、世界的な企業やパリのギャルソンによって流行やステイタスを発信するという使い方を示し、多くの人々に親しまれました。そして、その人気は宝飾品の部品や銃の安全装置を製作してきたバロー社が、その確かな技術で開発したバタフライクラッチの扱いやすさが下支えしていたことも想像するに難しくありません。歴史から見ると、このバタフライクラッチの開発があったからこそ、ピンバッジという認識が生まれて世界中の人々に愛されてきたと言っても良いように思えます。つまりこのバタフライクラッチと針という固有のスタイルこそが、ピンバッジのオリジナルであり、ピンバッジたる所以と言っても過言ではないでしょう。


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